シリア・アラブ共和国
(Syrian Arab Republic)

出典:外務省 各国・地域情勢(2011年5月現在)

一般事情

1.面積

18.5万平方キロメートル(日本の約半分)

2.人口

22,517,750人(2009年 世銀)

3.首都

ダマスカス

4.人種・民族

アラブ人(90.3%)、クルド人、アルメニア人、その他(9.7%)(2009年 CIA The World Factbook)

5.公用語

アラビア語

6.宗教

イスラム教 90%(スンニー派 74%、アラウィ派・ドルーズ派など 16%)
キリスト教 10%

7.略史

年月 略史
1918年 オスマン・トルコより独立
1920年 仏の委託統治領となる
1946年 仏より独立

政治体制・内政

1.政体

共和制

2.元首

バッシャール・アル・アサド大統領(2000年7月就任、2007年5月再任、任期7年)

3.議会

一院制(250議席、2007年4月選挙、任期4年)

4.政府

(1)首相 アーデル・サファル(2011年4月就任)

(2)外相 ワリード・アル・ムアッリム(2006年2月就任)

5.内政

 1970年以来シリア大統領職にあったハーフェズ・アサド大統領は、国内少数派(アラウィー派)の出身ながら、巧みな政治手腕(多数派スンニー派の掌握)により長期安定政権を維持したが、2000年6月10日に69歳で死去。その後は、次男バッシャール(長男バーセルは事故死)に政権が平和裡に移譲された。共和政体下にあるものの、実質はバアス党による一党支配。政権の課題は、中東和平及び経済面を中心とした改革の推進。2011年3月、南部に端を発した反政府デモの広がりを受け、治安当局との衝突により、シリア全土で多数の死傷者が発生。内閣は総辞職。

外交

1.全般

 中東和平問題等中東情勢の鍵を握る重要な立場にある。2005年2月のハリーリ・レバノン元首相の暗殺事件以来、米仏による対シリア圧力が強まり、国際社会において孤立してきた。最大の外交課題である中東和平問題については、1991年のマドリッド会議に端を発する現行の中東和平プロセスを支持しており、「平和と領土の交換」原則に基づいた包括的和平の達成が必要であるとする基本的立場を堅持している。バッシャール・アサド大統領は、外交政策については、前大統領の路線を歩んでいる。

2.対イスラエル

 イスラエルとは、過去3回の中東戦争を経験。現在もイスラエルとは対立状態にあり、ゴラン高原を占領された状態。シリアは1991年のマドリッド中東和平会議後、和平を「戦略的な選択」と規定し、安保理決議242及び338、並びにマドリッド和平会議の諸原則に基づく和平の達成(「土地と和平の交換」)を主張。1994年末以来、数回の断絶を挟んでイスラエル政府との間で和平交渉を行ってきたが、2000年3月のジュネーブでのアサド大統領・クリントン米大統領の会談以後、交渉は暗礁に乗り上げている。 2008年5月にシリア及びイスラエル双方が、トルコの仲介により和平交渉を再開したことを発表して以来、これまで4回の間接交渉を行ってきたが、2008年末のイスラエルによるガザ攻撃のため交渉は中断されている。

3.対米

 米は、シリアによるヒズボラやパレスチナ過激派支援などを理由に、シリアをテロ支援国リストに掲載している。特に2003年3月の対イラク武力行使にシリアが一貫して反対したことで、米との関係は悪化。2005年2月のハリーリ・元レバノン首相暗殺事件の翌日、米は在シリア大使を本国に召還。米は、2004年5月以降、国内法「シリア問責法」などに伴う対シリア制裁措置(米国製品禁輸、シリア政府所有航空機の米国内離発着の禁止、米金融機関のシリア商業銀行との取引停止)を実施している。オバマ米新政権発足後、米はシリアとの対話を模索する動きを見せており、2009年以降ミッチェル中東和平担当特使やバーンズ国務次官補などの政府高官のシリア訪問が相次いでいる。また、2011年1月、5年ぶりに在シリア米大使が着任し、歩み寄りへの兆しが見られたが、2011年3月以降のシリアにおける反政府デモの広がりを受け、当局の弾圧に抗議し、4月29日、追加的な対シリア措置を行う大統領令を発出。

4.対イラク

 かつてシリアとイラクは、ともにバアス党政権を戴く対イスラエル強硬派としてアラブ世界内の主導権争いを演じ、イラン・イラク戦争を契機に1980年に両国間の国交を断絶した。2003年のイラク戦争終了後、シリアは、米のイラク占領には正統性がないとして、主権のイラクへの移譲、選挙による正統政府の樹立、外国軍の撤退を訴え、また、国連やシリアをはじめとした周辺諸国の役割を強調してきた。 2004年6月のイラク暫定政権成立以降、シリアは同政権との協力に前向きな姿勢を示し、両国の懸案となっている国境管理問題やイラク資産返還問題につき協議を行ってきた結果、06年11月、断絶していたイラクとの外交関係を四半世紀ぶりに再開した。 2009年8月、バグダッドの官公庁を標的とした大規模なテロ事件が発生。イラク政府がテロ事件に関与した者の引き渡しをシリアに要求したのに対し、シリアは証拠不十分を理由に引き渡しを拒否したことで双方が駐在大使を召還する事態に発展したものの、ハーシミ副大統領などのイラク政府高官や宗教指導者などのシリア訪問は続いていた。2010年9月、両国外相間で大使の復帰が合意され、2010年12月現在、それぞれ任務を再開している。

5.対レバノン

 シリアは、歴史的経緯からレバノンを特別の同胞国とみなし、1990年のレバノン内戦終結後、推定約1万4千人の軍部隊を駐留させ、実質的にレバノンを支配してきた。その間、レバノン自体も親シリアの政体によって統治されてきたが、2005年2月にハリーリ元首相が暗殺されると、脱シリア支配が国内で声高に叫ばれ、米仏を中心とする国際的な圧力もあって、シリアは2005年4月に軍をレバノンから撤退させた。その後、2008年10月にシリアとレバノンは外交関係樹立を宣言する共同声明に調印し、関係正常化を実現した。

6.対周辺国

 シリアは、レバノン情勢、パレスチナ過激派との関係、イランとの関係などで周辺のアラブ諸国、とりわけサウジアラビア、エジプト、ヨルダンと関係が芳しくない状態が続いてきた。これに対し、イランとは戦略的関係と位置づけて関係を強化し、アサド大統領及びアフマディネジャード・イラン大統領の相互往来などを活発化している。2009年に入ってからは、サウジアラビアの呼びかけによりアラブ諸国の和解に向けた動きが進み始めている。また、トルコとの関係はFTA締結を含め経済関係を中心に良好である他、トルコの仲介によってイスラエルとの和平間接交渉を行ってきた(現在中断中)。

7.対欧州諸国

 欧州諸国は、1995年のバルセロナ会議に始まるEU・地中海諸国会議を通じて、シリアとの関係強化のモメンタムを強めた背景もあり、米とは一線を画して主に経済面での協力を進めてきた。特に2003年夏以降、米・シリア関係の悪化とシリアのEU重視の姿勢が相まって、シリア・EU連合協定締結交渉が加速化している。仏はシリアの旧宗主国であり、シリアとの政治的・経済的関係は他の欧州諸国のそれに比べて特に強い。
 2011年3月以降のシリアにおける反政府デモを受け、当局の弾圧に抗議し、5月9日、EUはシリア政府の高官13名を対象とする資産凍結などの制裁措置を決定。

国防

1.軍事力(ミリタリーバランス 2009年)

(1)予算 14億6,000万ドル(2007年時)

(2)兵力 29万2,600人(うち陸軍21万5,000人、海軍7,600人、空軍7万人など)
  予備役兵 31万4,000人
  兵役 徴兵制度 30カ月

2.国防戦略

 限られた財政事情の中で、イスラエルの潜在的な攻撃に対する防衛能力を維持するとともに、戦略兵器を保持することにより、対イスラエル抑止力の保持に努めていると見られる。シリア軍は、対イスラエル防衛のため、ゴラン高原の防衛陣地に一部の部隊を配置するとともに、ダマスカス周辺に多くの部隊を配置している。

経済(単位 米ドル)

1.主要産業

石油生産業、繊維業、食品加工業

2.GDP

約521億ドル(一人当たり 2,474ドル)(2009年世銀)

3.GDP成長率

4.0%(2009年世銀)

4.インフレ率

2.9%(2009年IMF)

5.失業率

8.5%(2009年, CIA, The World Factbook)

6.貿易

(1)輸出 143億ドル(2009年 UN data)

主要輸出品: 石油・石油製品、繊維製品、果物・野菜
主要輸出先: イラク、レバノン、独、エジプト、サウジ・アラビア、伊

(2)輸入 183億2,000万ドル

主要輸入品: 金属・金属製品、機械類、自動車等の輸送機材、化学製品
主要輸入元: サウジ・アラビア、中国、トルコ、エジプト、UAE、伊、露

7.為替レート

シリア・ポンド
1ドル=46.8シリア・ポンド(公定レート)(2010年 シリア中央銀行)

8.経済概況

(1)基本的には社会主義的計画経済を維持しながらも、民間資本の導入と規制緩和を中心とした経済政策を採用。近年、緩やかながら外資導入、国営企業民営化、金融・保険分野の民間への開放、証券市場設立等を通じた市場経済への移行努力を続けている。石油生産の減少や天候に左右される一次産業主体の産業構造からの脱却などが課題となっており、観光産業、繊維産業の活性化、外資導入による新規産業創出などを進めている。近年では、湾岸諸国及びイラン並びに中国、インド、マレーシア等のアジア新興国からの投資が増加している。

(2)2004年5 月以降、米国が発動したシリア問責法に基づき、医療品、食料品を除く対シリア禁輸、シリア航空機の国内離発着禁止、シリア商業銀行と米国の金融機関の取引停止、一部資産凍結を内容とする対シリア制裁が発動されているため、この影響が経済に現れている。また、近年では、イラク難民の流入、世界的な食糧価格高騰、政府による燃料費補助金削減等によって価格インフレ問題も深刻化した。特に過去数年間の北東部の干ばつ被害は深刻。

経済協力

1.主要援助国

独、仏、米、伊、スペイン(2008年)

2.日本の援助(2009年度末まで)

(1)有償資金協力 約1,563.05億円

(2)無償資金協力 約292.04億円

(3)技術協力 約273.40億円

※これまで、電力、農業、医療、水分野等を中心に国民のニーズに基づく援助を実施。有償資金協力としては、電力分野を中心に実施しており、3つの発電所建設事業(電力供給量の約3割に相当)を実施。

二国間関係

1.政治関係

年月 略史
1953年12月 国交樹立
1954年6月 在シリア公使館開設
1958年3月 在ダマスカス総領事館開設(エジプトとの合邦のため公使館廃止)
1962年4月 在シリア大使館となる。(エジプトの合邦から分離独立)
1978年12月 在日シリア大使館開設

(1)日本との二国間関係は伝統的に良好。

(2)日本は、1996年2月から、ゴラン高原に展開するUNDOF(国連兵力引き離し監視隊)に要員を派遣している。現在、合計46名の要員のうち、15名がシリア側のキャンプ・ファウアールにて任務に従事している。

2.経済関係

対日貿易(2009年財務省貿易統計)

輸出 33億7,754万円(石油加工品、綿花、石鹸等)
輸入 261億2,665万円(自動車、一般機械等)

3.文化関係

シリアには、日本語教育機関としてダマスカス大学人文学部日本語学科、ダマスカス大学高等言語学院日本語科、アレッポ大学学術交流日本センターがある。2008年には、第11回日本語スピーチコンテストが開催され、日本語学習者28名が参加した。

日本は、シリアにおいても積極的に日本文化の紹介や普及を行っており、毎年ダマスカスやアレッポなど主要都市において「日本フェア」を実施し、日本文化や日本の街並みや自然を紹介している。

4.在シリア邦人数

69人(2011年5月)

5.在日当該国人数

177人(2009年)(法務省)

6.要人往来

(1)往

年月 要人名
2000年6月 河野外務大臣
2001年1月 石破防衛副大臣
2001年8月 杉浦外務副大臣
2002年8月 参議院訪問団(関谷議員他)
2002年11月 茂木外務副大臣(総理特使)
2003年3月 中山元外務大臣(総理特使)
2003年4月 川口外務大臣
2003年12月 逢沢外務副大臣(総理特使)
2004年3月 岡本総理補佐官
2006年11月 有馬政府代表
2007年6月 浅野外務副大臣
2008年3月 有馬政府代表
2009年5月 西村外務大臣政務官
2009年8月 飯村政府代表
2010年5月 長島防衛大臣政務官
2011年2月 飯村政府代表

(2)来

年月 要人名
2001年3月 ムアッリム外務次官
2002年7月 リファーイ経済貿易大臣
2003年2月 ダハル電力大臣、アッタール元文化大臣
2004年2月 ダルウィーシュ外務次官
2008年12月 フセイン・シリア日本友好議員連盟会長
2009年1月 ミクダード外務副大臣
2009年11月 アガ文化大臣
2009年12月 ダルダリ経済担当副首相
2011年1月 シャアバーン大統領補佐官

7.二国間条約・取極

貿易取極 1953年署名

日本青年海外協力隊派遣取極 1967年署名

技術協力協定 1985年署名