「三城」会長30億申告漏れ メガネ大手 国内居住認定か

(出典:産経朝刊 7月11日)

 メガネ販売大手で東証1部上場の「三城」(東京都中央区)の多根裕詞会長(75)が平成10年から15年にかけて、従業員らに売却した株式約700万株の売却益を申告していなかったとして、大阪国税局が申告漏れを指摘していたことが10日、分かった。
 申告漏れの総額は、約30億円にのぼるとみられ、同国税局は無申告加算税など約5億5000万円を追徴課税(更正処分)した(注1)
 多根会長は、スイスに居住しているとしたが、国税当局は、兵庫県姫路市に居住の実態を認定したものとみられる(注2)
 関係者によると、多根会長は10年から15年にかけて、三城の株式を多数の従業員に相対取引で売却。さらに、15年2月、617万株を多根会長が100%出資する英国の資産管理会社に売却した。こうした売却株式数は約700万株、約100億円に上るとみられ、多根会長の取得価額を差し引いた約30億円が利益になるとみられる。
 12年の税制改正で、日本国籍を持つ人が海外に住み、海外財産をもらった場合でも原則課税となった(注3)

 居住性の有無の判断が争いになったもので、武富士事案では贈与税での国内に住所の有無が問題となったのに対し、本件では、所得税法上の住所の有無が問題となったようである。
 私見では、相続税法と所得税法では、居住性の判断が異なっていると思うのだが、その当たりの違いは、今後明らかにされるのであろうか。

注1※平成16年1月1日以降の上場株式の譲渡だと、国税地方税を合わせて10%の税率による。

注2※日ス租税条約によると、株式の譲渡収益については、原則として、居住地国(スイス居住者ならスイス)で課税。その他の所得も居住地国課税なので、結局、スイス居住者が日本の株式を売却しても、スイスで課税。(スイスで実際に課税かれるかどうかは、確認していない。)

注3※相続税及び贈与税に対する改正で、本件は所得税の課税関係なので、本事件とは直接の関係がないのではないか。