アマゾン関連会社140億円の追徴課税

(出典:産経朝刊 7月6日)

 米国のインタネット通販大手「アマゾン・ドット・コム」の関連会社が、東京国税局の税務調査を受け、日本国内の事業をめぐり、2005年(平成17年)12月までの3年間について、140億円前後の追徴課税処分を受けていたことがわかった。アマゾン側は不服として、日米の2国間協議を申請している。
 日米租税条約では、米企業が日本国内に支店などの「恒久的施設」を持たない場合、日本に申告、納税する必要はない。
 関係者によると、関連会社は日本国内に支店を置かず顧客との契約や代金授受などを直接行っていたが、国税局は、流通などを委託された日本法人が実質的に支店機能を果たしていたと認定。日本で発生した所得の相当額を日本に申告すべきだと指摘されたもようだ。
 同社の昨年度の年次報告書などによると、課税された関連会社は「アマゾン・ドット・コム・インターナショナル・セールス」(本社・米シアトル)。セールス社は販売業務を「アマゾン・ジャパン」(東京都渋谷区)に、物流業務を「アマゾンジャパン・ロジスティク」(千葉市市川市)に委託し、手数料を払っていたが、顧客との契約や売上金計上はセールス社(米国法人?)で行い、納税務米国で行っていたとされる。

 新聞記事を読んでみて、アマゾン・ジャパンの日本語サイトから日本の書籍を注文しても、カードの支払いは外貨(米ドル)で外国法人名にされていた理由がやっとわかった。

 この種の恒久的施設(PE)の認定課税の事案の多くが、期限後申告等の形で終結していたようであったが、今回は決定処分(無申告のため)されたようである。

 平成17年12月期から3期の課税であるが、ご存じのように、米国での申告は、通常12月決算で翌年の9月か10月頃申告されているので、20年12月期は資料がそろわなかったということだろう。

 外国企業が日本で事業をする場合、PE課税を避けるため、本件のように、事業の機能(販売、バックオッフィス業務、物流等)をいくつかに分散して、別法人か第3者にその機能を一部づつ分散される方法がとられることがある。
 国税局としては、それらの別法人に配分された手数料が小さいため(たぶん経費の105%の収入)、本丸であるPE認定をしたようである。別法人の取り分、物流業務とバックオフィス業務の取り分が小さいというだけであれば、移転価格課税によって、その配分を改めさせればいいだけであるが、機能分析に基づくものであるため、日本への配分額も限定的になるということになる。
 一方、PE認定すると、売上から対応する経費を控除することとなるが、海の向こうの経費(今回の場合は、膨大なシステム構築等の費用のうち、日本対応分)はなかなか認められないので、勢い売上に近い金額が所得として認定される傾向にあり、その点が、移転価格課税に比べて厳しい課税になるようである。

 今回の場合、販売がインターネット経由ということなので、OECD等の議論に基づけば、たぶん、国内に販売用等のサーバーがあり、それをPEに認定するというのが普通であるが、アマゾンほどの会社が、そんな「へま」をしないと思う。そこで、新聞記事のように、「委託された法人が実質的に支店機能を果たしていた」と認定したのであろうが、インターネットの販売は、インターネットそのものがポイントであるだけに、販売以外の機能の場所を支店と認定するのは非常に難しいと思う。それだからこそ、アマゾンは、期限後申告等による妥協はしないで、相互協議に活路を求めたのだと思う。

 今回の追徴の140億円であるが、追徴税額なのか課税もれ額なのかが明確でないが、課税もれ額とすると3期で140億、1期50億円であるので、それほど大型事案ではないといえようが、追徴額だと法人税額だけなので、その3倍程度の金額となり、かなりの大型事案といえることになる。
 租税条約に基づく相互協議は、必ず協議が成立するものではないので、場合によっては、協議不調で、国内の異議申立→審査請求→訴訟の手順を踏む可能性もあることである。

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