ミャンマーの主要税目の概要

ミャンマーの所得税(income tax)の概要

1. 法的枠組み

1.1 以下の者に所得税の納税義務が課せられている。
(ア) 国営企業
(イ) 国営・民間共同運営会社
(ウ) 国営プロジェクトに従事する外国人
(エ) 給与所得者
(オ) 非居住外国人
(カ) 居住外国人
(キ) 企業
(ク) 非居住国民
(ケ) その他の事業団体や合弁会社

1.2 所得税は直接税であり所得に対して徴収される。
所得とは納税者が受け取る現金、福利厚生および臨時収入を意味し、また企業や事業団体の利益も含まれる。保有する固定資産の賃貸収入も課税対象となる。

1.3 1974年に制定された所得税法はイギリスの税法を基礎に立案された1929年ビルマ所得税法令に基づいている。

1.4 本所得税法は国営事業、国営・民間共同事業、民間事業に適用される。

2. 税率

2.1 所得税率
(ア) 企業(ミャンマー国営企業およびFICによって運営される企業) 30%
(イ) 国営プロジェクトに従事する外国人および外国組織 30%
― 個人 20%
(ウ) 非居住外国人 35%
(エ) 非居住国民 10%
(オ) 給与所得者 3〜30%
(カ) 国営・民間共同運営会社(13段階) 3〜30%
(キ) 国営企業 30%
(ク) 利子所得(15段階) 5〜40%
事業
資産
未公表所得
その他
(ケ) キャピタルゲイン(資本利得)
― 非居住外国人 40%
― その他 10%

2.2 基礎控除
総所得の20%但し上限は 12000チャット
配偶者 5000チャット
子供
  5歳未満 1000チャット
  5歳から10歳 1200チャット
  10歳から15歳 1600チャット
  15歳以上 2000チャット

3. 手順

3.1 確定申告
会計年度末から3ヶ月以内の4月1日から6月30日までに行うこと。

3.2 前納
会計年度中、月々または四半期毎に前納することができる。

3.3 必要書類の整備
納税者は審査用に会計書類を整備し、国内・外国企業共に世界的に認知されている会計ルールに準じたシステムで会計管理をすることが義務付けられている。
「法人サークル税務署」とはFIC下の企業や外国企業など法人レベルの納税者に対応する目的で形成された組織である。

4. 外貨への課税

4.1(ア)ミャンマー国民が商品の売買や事業による外貨所得を受ける場合 
(外貨総収入に対し) 2%
(イ)居住外国人が建物の賃料や機械のレンタル代を受け取る場合 15%
― 給与
― サービス提供への報酬
 (ウ)条項に記された収入を得るミャンマー国民 10%
 (エ)個人またはMICとは無縁の事業による輸出収入 2%

5. その他

5.1 居住条件
非居住者(個人)
ミャンマーでの滞在が183日を超過する場合

ミャンマーの利益税(profit tax)の概要

1. 法的枠組み

1.1 利益税とは所得課税の非対象者である居住国民に対して課せられ、非給与所得者である国民やミャンマー法人法令下で組織化されていないパートナーシップなどの団体などが対象となり、またキャピタルゲイン(資本利得)も課税対象となる。

1.2 利益税は所得に対して課せられる。

1.3 正式名称: 利益税法1976

2. 対象

― 本税法に定められる対象納税者
― 固定資産売却による資本利得
― 報酬を得るエンターテイナー
― 私営事業法に登録している個人
― 塩の生産者

3.課税率

― 計画率システム
― 所得によって50のレベルがあり、最低所得レベルは10000〜12000チャット。
― 所得が30万チャットを超える場合の課税率は50%とする。
― 税率は3.3%から最大50%とする。

4. 手順

毎年確定申告は4月1日から6月30日の間に行われており、一年を通して納税することができる。
資本利得についてだが、資産の売却によって生じた利益に対する課税率は10%となり、売却価額は5万チャットを超えなければならない。

5. 審査

― 累進課税法が適用される。
― 審査は申告内容とその他の情報に基づいて行われる。
― 罰金は以下の行為について課せられるが10%を超えることはない。
前納未払い
確定申告の未提出
税金の未納
税務署からの召集無視

6. 告知義務違反

課税を逃れた所得は未公表所得として扱われる。

ミャンマーの商業税(commercial tax)の概要

1. 法的枠組み

1.1 商業税は1976年に立法され政府セクターのみに適用が限定されていた商品とサービスに関する税法に伴い1990年に施行されることとなった。

1.2 1976年以前、ミャンマーの間接税を主に占めていたのは商業税であり、以下4つの法令下において徴収されていた。
(ア) 1949年消費税法令
(イ) 1947年ホテルおよびレストラン法令
(ウ) 1947年娯楽税法令
(エ) 1956年事業設備法令

現在の商業税法による商業税とは国産品に限らず輸入品や法令に定められているサービスをも対象に課税される。

1.3 商業税は以下の納税者に義務付けられている。
(ア) 輸入業者
(イ) 製造業社
(ウ) 一定種のサービス提供者(貿易、輸送、ホテルやレストランなど)
(エ) 法人企業
(オ) 事業団体・合弁会社

2. 課税率

2.1 輸入品や国産品に関しては以下の計画定率が適用される。
スケジュール1 免税
スケジュール2 5%
スケジュール3 10%
スケジュール4 20%
スケジュール5 25%
スケジュール6 30%
スケジュール7 特別率 50〜200%

2.2 輸入品に関しては、陸揚げ費込み原価をもとに商業率が徴収される。

2.3 国産品に関しては、卸に始まり最終購入者の手に渡るまでの各過程での総売上をもとに徴収される。
生産高税−投入税=各段階で商業税が政府に納められる(クレジットシステム)

2.4 サービスに対する税率は以下のように定められている。
種類 税率 基準
(ア)旅客輸送 8% 領収書
(イ) 娯楽
映画やビデオ 30% 領収書
その他 15% 領収書
(ウ) 貿易 5% 売上高
(エ) ホテルや宿泊施設 10% 領収書
(オ) レストラン 10% 領収書
(カ) 観光業 5% 収益
(キ) 材料費を含む自動車清掃やオイル交換 10% 収益
(ク) 生命保険料以外の保険 5% 保険料
(ケ) ヘアドレッサー 5% 収益
(コ) 報道 5% 収益

3. 手順

3.1 登録
・ 月払いと四半期毎の申告手続き
・ 年度末の一括申告
・ 伝票や証明書などの原本書類管理と経理管理
・ 管轄税務署への現状報告と審査
・ 指定日に納税
・ 税金は(控除分などを差し引いた後)正味領収額に対して課税される

3.2 確定申告
月次および年次申告を管轄税務署へ行うこと。

3.3 前納
毎年、会計年度中に前納することができる。

4. その他

商業税の基本は付加価値税と類似しており、付加価値税の原理が商業税に応用されているので、付加価値税の施行実施に際しては基礎となり活用することができる。

ミャンマーの印紙税の概要

1. 法的枠組み

収入印紙には司法が発行するものとそうでないものの二種類があるが、印紙税は両収入印紙にかかる。
収入印紙が正式に添付されていない書類は、裁判での証拠書類など民事・刑事訴訟の証拠として認められない。

司法印紙
民事訴訟や法廷で使用される司法書類の記録や公示に関して裁判費用を定めている裁判費法令下のもと、司法印紙の使用は義務付けられている。

非司法印紙
様々な法的文書に課せられ、詳細はミャンマー印紙法令に説明されている。

2. 課税率

文書の種類により印紙税率はことなるが、供述書、輸送記録、船荷証券、信用状などの法的文書に特定の税率がかかる。
税率については下のテーブルを参照。

法的文書について 印紙税
供述書 25チャット
同意書またはメモ
(ア)為替手形の販売に関する場合 1チャット
(イ)国債の販売に関する場合 最低80.5チャット
(ウ)その他 6チャット

会社の定款
(ア) 名目資本金
2500チャット〜10万チャット 500チャット
10万チャット以上 1500チャット
(イ) 船荷証券 4チャット
(ウ) 社積 額面または保証価値の2%
(エ) 用船契約書 25チャット
(オ) チェック 0.5チャット
(カ) 輸送記録 額面または予想価値の5%
(キ) 担保社債 40チャット

司法印紙、非司法印紙に対する印紙税率は財政対策の一環で上昇しており、実際国内外の産業による経済活動が活発化した過去3年間で顕著に上がっている。
印紙税の徴収額はIRDが徴収する税金総額の3.2%が目安とされている。